トランジスタ技術の圧縮 私はドライヤー派、のちカッター派
先週の土曜日(2023年11月11日)、フジテレビで「世にも奇妙な物語' 23秋の特別編」が放送されました。その最後の物語は「トランジスタ技術の圧縮」。
トランジスタ技術とはまさに電子デバイスが真空管からトランジスタに移行しつつあった1964年に創刊され、その後の電子立国ニッポンを支え、今でも出版されているエレクトロニクスの専門月刊誌です。
一応電子工学を学び無線で生計を立てている私も、そのトランジスタ技術(略してトラ技)は毎月購読し、バイブル的存在でした。発刊当初は文字通りトランジスタの増幅回路だとか無線回路に応用するための技術誌だったのでしょうか、1980年代はマイクロコンピュータ用のCPUやLSIが開発されトランジスタよりむしろこれらの使い方や、ソフトウェアの説明などに比重を移していました。私も時代に取り残されまいとトラ技を定期購読しむさぼり読んでいました。1980年代後半には連載されていたZ80(8ビットCPU)をベースにしたマイクロコンピュータを製作記事の通りに部品を買い集めては組み立てていたものです。そのコンピュータは最終的にはフロッピーディスクドライブを搭載し、OS(オペレーティングソフト)はCP/M(MS-DOSと対極にあるOS)を走らせる本格的なものでした。
しかし、1990年代になるとメーカー製の「Windowsパソコン」が販売され、結局それを購入、手作りしてきたCP/Mマシンは引っ越しの荷物になるので廃棄の運命をたどることになりました。
しかし、そのCP/Mマシンを組み立てた技術は身にしみこみ、Windows時代でも各種ソフトの開発の力になったのは財産でした。
そんな思い出があるトラ技が世にも不思議な物語で放送される、しかも題名は「トランジスタ技術の圧縮」。トランジスタ技術誌の内容からして、新たな電子データの圧縮方法の開発物語かなと思って観ていると・・・
およよ! まさかの・・・アレかい。
そう、最先端のエレクトロニクス技術情報誌であるトランジスタ技術誌の唯一の欠点、それは「分厚い」こと。
雑誌の半分以上はこのような広告で埋め尽くされています。その雑誌はバイブル的存在なので本棚にずっと保管しておきたい。一年分くらいならいいのですが、これが2年、3年となってくるとトラ技誌が本棚を占有しだします。
人間、考えることは皆同じで半分以上を占有している広告のページを削除しようとしたのです。
その方法はまず背表紙をはがし、中身の広告のページを取り除き、記事だけのページで再び製本するというものでした。番組ではアイロンが使われていましたが、私の場合はドライヤーを使っていました。
しかしドライヤー方式は時間もかかりめんどくさいので、結局は物語でも言われている「むしり取る」方式、実際にはカッターナイフで切り取る方法を採用したのでした。自分の家だけで読むので体裁なんかはどうでもよく、チューブファイルに閉じこんでおけば問題ありませんでした。
ほとんどの人はこのドラマの意味が分からないと思いますが、実際、圧縮をやった私はドラマを見ていて「そうそう」と納得したり、爆笑したりして当時の圧縮の戦いを思い出してしまいました。
今でも圧縮したトラ技があるはずだ探しましたが、引っ越しで捨ててしまったようで、残念ながら見つかりませんでした。
今はエレクトロニクス技術の最前線からは一歩引いてしまいトラ技は購読していませんが、それでも技術力をさび付かせないために数年に一度購入しています。
もう10年以上も前のトラ技が残っていました。地デジとか今でも役に立ちそうな内容です。
そして驚くのは圧縮する必要がないくらい薄くなっていること。これでも広告ページがたくさんありますが、圧縮の必要性を感じないくらいの厚さです。
値段は高いですが、ムック版のトランジスタ技術SPECIALなら広告のページがなく、圧縮する必要はありません。
しかし、この圧縮、私に限らず他の読者もやっていたようで、私もどこで「ドライヤーで背表紙をはがすといい」という話を聞いたのか。今のようにネット時代でもない当時、どのようにしてこの方法が流布していたのか、今から思えば不思議です。
このように邪魔者扱いされていた広告ですが、地方に住んでいた当時は、部品の入手は広告に掲載されていた通販が唯一の方法で、広告なければ先のCP/Mマシンも組み立てられず、またあれだけの濃い内容の記事が書かれた雑誌が千円以下で買えるのは、分厚い広告収入があったからだと、ドラマでも演じられていましたが、広告ページを廃棄するときの合掌の気持ちでいっぱいです。
合掌
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